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4月7日。道を彩る桜は暖かい気候にやられ半分ほど散っている。この辺では珍しくない、入学式シーズンの残念な光景。
散った桜が絨毯となっている道路を踏みつけながら、男は学校の門をくぐった。
……まぁ、俺ですけども。
奥川駿(オクカワ シュン)。16歳。誕生日が4月の最初の方にある為もう16歳だ。
誕生日パーティーなんてものはやっていない。アレだ、色々忙しかったんだ。決して祝ってくれる人がいない訳じゃない。
そんな俺は独りで登校中。この高校に一応同中の人は何人かいるけど、あまり仲の良い人はいない。
……正直言って、学校で1人でいるよりもこうやって1人で登校する事の方が寂しいと俺は思う。
勿論彼女なんていない。いたこともない。
俺は目の前の男子生徒2人を蹴り飛ばしたい衝動を押さえ、自分の教室に向かった。
蹴らないよ? だってその後めんどくさいじゃん。俺ケンカ弱いし。しかしリア充を蹴るぐらいは許されても良いと俺は思う。
俺は名簿で早い方なので、上手くいけば窓側の1番後ろの最高の席になる。
結果は上手くいっていた。窓側の1番後ろ、心地よい日差しが当たる、昼寝に最適な席。
高校でもこの席はやっぱり気楽で良いな。のんびりできる。この世界に席替えなんてものは必要ないと思うんだ。
「おはよー! 隣? よろしくね~!」
そんな声が聞こえて横を向くと、女の子が横に座ってにこりと笑っていた。清楚な感じのかわいい女の子、化粧はしてないか、しててもほんの少しだろう。日差しに当たる長い黒髪が光って見える。
敢えてもう1度言う。この世界に席替えなんてものは必要ないと思うんだ。
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