2.消しゴムと手

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  「あ、駿! あれ見て!」  百合がある方向を指差して言う。プールの更衣室? 「ほら! あそこ消しゴム乗ってるよ!」 「消しゴム? ……あ、本当だ」  更衣室の入り口辺りの屋根にあの消しゴムが乗っていた。きっと回収し忘れたんだろう。もしかしたら回収が面倒になったから放置してるのかも。 「駿! 取ろ!」 「あぁ、別に良いけど。でも届くかな?」  俺達は今学校の敷地外にいるが、プールはギリギリの位置にあるので、その点は問題ない。ただ、高さのみ。  ジャンプしてもちょっと届かねぇよな…… 「じゃあ駿だっこして!」 「……は?」 「だっこ! さっき大輝が駿と瑠魅にしたみたいにさ!」  いや、あれは大輝だからできるんであって俺の腕力ではいくら女子の軽い体でも無理だ。 「俺の腕力じゃちょっと無理だ」 「えぇ~……じゃあ肩車!」 「あぁ、それならだいじょ……うぶじゃない!」  この人がいっぱいいる所で肩車なんてできるか! 「良いじゃん良いじゃん! 肩車ぁ!」  俺の腕を引っ張りながら駄々をこねる百合。  いや、これはいかん。なんか俺の中の色んな物がドクバクしてるぞ…… 「……だめ?」  トドメの一撃が心臓に刺さりました。首を傾げて上目遣いは反則だ。  「……わかったよ」  俺はフェンスに寄りかかってしゃがんだ。俺百合にこの表情されたら大抵のわがまま聞きそうだ。悲しいけど。  百合の両手が肩に乗る。  ……そういえばさ、百合ってスカートじゃん。普通の肩車でもマズイのにスカートって……大丈夫なのか? 周りの眼とか理性とか。  
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