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「駿、大丈夫? 顔真っ赤だよ? ……私、そんなに重かった?」
「いや、そういうわけじゃない……」
というか重たいとか感じる余裕がなかった。むしろ浮いてる気分だった。
「消しゴム取れたか?」
話を無理矢理戻した。いつまでも肩車の話をしていたくない。
「え? うん、ほら!」
そう言って百合は右手に持っていた消しゴムを俺に見せる。
こんなものの為に俺はあんな恥ずかしい事をしたのか……
まぁ……でも良いか。嫌って訳じゃなかったし。
「で、それどうすんだ?」
「ん~……貰っちゃおっか!」
まぁ置きっぱなしになってたんだし、問題ないだろう。
「よいしょ……じゃあ行こっ!」
百合はその消しゴムをかばんに入れて歩き出した。
学校から交差点まではほとんど距離がない。100メートルぐらいだ。だから1、2分程度でたどり着いた。
「じゃあ、また明日」
「うん! ばいばい!」
交差点で百合とわかれ、俺は自分の家に向かって歩いた。
交差点を渡って少し歩くと、前の人間が目に入った。
大きくて赤髪に、俺と同じ制服……間違いないな。
「大輝!」
「んぁ?」
俺が少し離れた所から呼びかけると、大輝は後ろを振り返り止まった。
「駿か。肩車はもういいのか?」
「うっ……見てたのか?」
「あぁ。と言うか帰ってく生徒全員が見てたぞ?」
「声ぐらいかけろよ……」
「いや、かけられる空気じゃなかった」
そんな空気だったのか……いや、まぁ何となく予想はできる。
大輝はそう言うと再び歩き出した。帰り道が一緒なので俺もその後ろについていく。
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