2.消しゴムと手

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  「大輝って家こっちなのか?」 「あぁ」 「でもこっちだと俺と同じ学区だから中学一緒のはずだけど……」 「今月引っ越した。いや、正確には家出した」  家出って…… 「なんで?」 「家族と上手くいかなかった。それだけだ」  大輝はさらりとそう言ってのけた。家族……か。上手くいかない家族もあるんだな。俺にはわからないけど。  っと……俺の家に着いちまった。 「じゃあ俺の家ここだから。暇だったら遊びに来なよ」 「……百合もそうだが、お前もやっぱり変な奴だな」 「変な奴? なんでだ?」 「俺と仲良くしても何も特なんてないぞ? 教員には目を付けられてるし、それに関わったお前達もきっと良い風には思われていないだろう」  大輝の目は真剣で、少し悲しげだった。 「どうして俺に関わろうとするんだ?」 「う~ん……そう言われてもなぁ……」  俺にはその答えを上手く言うことができなかった。 「そうか……まぁ、なんだかお前とは妙に気が合いそうな気がする。今度ゆっくり話がしたい」 「あぁ。じゃあまたな」 「それと小山……百合に言っといてくれ。俺は煙草は吸わん」 「明日自分で言いなよ。どうせ百合から話しかけてくるだろうし」  大輝はふっと微笑み、歩き出した。  それを見た俺も少し微笑み、自宅へ入っていった。 「ミィ!」 「あぁ、ただいま。エサか?」  玄関にいる俺に黒猫が寄ってくる。  因みに名前は結局「クロ」にした。黒いからクロ、わかりやすい。百合はトラって名前が良かったらしく、今でもトラって呼んでるけど。  それにしても……人って見かけによらないんだな、やっぱり。赤い髪を思い出しながら、俺はそんな事を思っていた。  
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