241人が本棚に入れています
本棚に追加
『はい?』
「中野瑠魅さんのお宅ですか?」
大輝の丁寧な敬語に何か違和感を感じた。
『そうですけど……どちら様ですか?』
「えーっと……とりあえず外に来てもらえばわかるかと」
恐らく瑠魅の母親だろう女性の声がした。しばらくしてインターホンから少し離れた位置にあるドアが開く。
「えっ?」
第一声はそれだった。そりゃ赤い髪の大男が立っていて、その頭の上に我が子の小さな顔があるんだからそんな反応もする。
「瑠魅さんが俺達といたところ眠ってしまいまして」
「……とりあえず中へどうぞ」
瑠魅の母親らしき人はそう言って俺達を家の中に入るよう促した。
「わぁ、綺麗な家……」
瑠魅の家に入るなり百合がそう呟いた。家の中は全体的に白く、明るさを感じる。
「驚いたわ。瑠魅が他人に懐くなんて……」
「は?」
瑠魅の母親は瑠魅を部屋で寝かせると、リビングに座っている俺達にお茶を入れ、そう言った。
「あの子ね、昔から凄く人見知りで家族以外に懐かなかったのよ。1人っ子だから遊ぶ事もなくて困ってたの」
「人見知り……」
俺はその言葉を小さく呟いていた。まぁ、確かにそんな感じだ。
「でも良かった。あの子に友達ができて。初めてなのよ?」
「そうですか……俺も初めてです」
大輝がそう返した。それを聞いて俺は何も言えなくなる。
「……意外です。あなたは俺を見ても怖がらないんですね」
「瑠魅が懐いた人が悪い人な訳が無いわ」
瑠魅の母親は微笑みながら、当然のように大輝にそう言った。
母親というのに好感を持ったのは、これが初めてだ。でもきっとこの人のような母親が普通の母親なんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!