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「じゃあ俺達はそろそろ……」
少し話をした後、大輝がそう言って立ち上がった。
「あ、もう少し待って? たぶんそろそろ帰ってくるから……」
そう言ったのとほぼ同時に、車が近くに止まる音がした。
「ただいま~……」
玄関のドアが開き、男性の声が聞こえる。それと同時に瑠魅の母親が立ち上がり玄関に走っていく。瑠魅の父親だろうか。
《ねぇ、駿》
耳元で百合が囁いた。何かむずむずする。
《何だよ》
《私達邪魔じゃない?》
そんな事を言われても、この状況で俺達だけ帰る訳にもいかない。
しばらくした後に2人が居間へ入ってきた。
入ってきたのは瑠魅の母親と、30代くらいの男性だった。
「娘が世話になったね」
そう言って頭を下げてきた。俺達はそれを返すように頭を下げる。やっぱり瑠魅の父親みたいだ。
瑠魅の両親が前に座ると、俺達に座るように促した。
誰かの親とこうして話すのって初めてだ。何か変に緊張する。
と言うか、緊張のあまりほとんど喋ってねぇ。
「瑠魅は1回寝たら起きないんだよねぇ……」
瑠魅の父親がそう呟いた。
「見ての通りまだ子供みたいな子だけど、これからも瑠魅の事、どうかよろしく頼むよ。同級生として、友達として……」
大輝は何も言わずに頷いた。俺達もそれに合わせて首を縦に振る。
瑠魅はきっと、とても大事に育てられてきたんだろうな。
少しだけ、羨ましいと思った。
ガチャ……
ドアの開く音がした。リビングの入口を見ると、瑠魅が目を擦りながらこちらを見ていた。
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