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おぼつかない足取りで瑠魅は両親の傍へ行き、その間に座った。
「ほら、お礼言いなさい」
照れくさいのか、瑠魅は俯いて何も言わない。マジで小学生みたいだ……
「……かごだま……」
……何て?
「かごだま……籠、球……籠球……バスケか?」
大輝がそう訊くと中野は首を傾げた。バスケまでたどり着くのに2、3秒だった。そういや大輝って頭良かったんだ。
と言うか、バスケが何? 瑠魅はもう何も言おうとせず、両親の間に人形のようにちょこんと座っている。首を傾げたから正解なのかもわからない。
「じゃあ、帰るか」
大輝がそう言うと俺と百合は同時に頷く。俺達は3人に軽く頭を下げ、立ち上がった。
「……待って……」
玄関まで行き、外に出ようとしたら瑠魅がそう言って大輝に近付いた。
「……ありがとう」
「……あぁ」
大輝はそうとだけ返して玄関のドアを開け、外に出ていった。
「あははっ、何か変に緊張しちゃった」
俺が思っている事を隣で百合が言った。つーかこれ本当俺達来ない方が良かったんじゃないか?
「駿も見事に無言だったね~。大輝が1番喋ってたなんて珍しい!」
黙っていた反動か百合の口がよく動く。大輝は全く反応せずに前を歩いている。
確かに見事に無言だった。自分でもわかるぐらい空気だった。今瑠魅の家に戻っても「どちら様?」って言われそうなぐらい空気だった。
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