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「大人に感謝されたのなんて久しぶりだから何か変な気分だ」
百合と別れて大輝と2人になった時、大輝がふと呟いた。まぁその髪だからなぁ、あんまり誉められる事じゃない。
「髪、黒くしないのか?」
「しねぇ」
ふと訊いた事に大輝は即答した。
「なんでだ?」
「言いたくねぇ」
俺の2、3歩前で大輝は歩きながら答えた。つまり、何か理由はあるのか。
「なぁ」
「ん?」
大輝はまたこちらを見ずに話し出す。
「髪が赤いのはそんなに悪い事だと思うか?」
「まぁ、良い事じゃないよな。特に高校生なんかだと」
「そうか」
でも、少なくとも俺はもう大輝を怖いと思う事はほとんど無くなった。ちょっと一緒にいればわかる、大輝は優しい人だ。怒ってる所を見た事が無い。
まぁ、笑ってる所も見た事無いけど。
「でも、良いとか悪いとかってそんな重要じゃないと思うな」
俺がそう続けると、そこでやっと大輝は俺の方に振り向いた。
「どういう事だ?」
「ん~、なんて言うか……説明しづらいけどそういうのって結局、ほとんどが偏見だと思って。髪を染めるのが禁止されてるのって素行が悪いように見えるからだろ? そりゃ第一印象は大事だけど、それよりももっと大事なのもある」
もちろん犯罪とかまで行ったら間違いなく悪いんだけど。
「……本当に、お前は変なやつだな」
「な、何だよ……」
大輝はまた前を向き、俺の家を通り過ぎていった。少しだけ笑っているように見えたのは、気のせいではなかったと思う。
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