4.向日葵

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   5月5日、こどもの日。そしてゴールデンウィーク最後の日、俺は1人である所へと向かっている。  ゴールデンウイークはどう過ごしただって? バイトですが何か?  今月から始めた寿司屋のバイト。当たり前だけどまだ全然慣れてない。  感想は……びっくりしたってのが1番。  そして本当は今日は休みの予定だったんだが、昨日の時点で予約が大変な事になっていたので夕方から急遽入る事になった。  まぁ思ってたよりも楽しいし、今日の予定もそんなに時間は掛からないから問題は無い。 「変わってないな……」  その施設を見て俺はそう呟いた。当たり前と言えば当たり前だ。1ヶ月振りなんだし。  15年いたんだし。 『ひまわり園』  そう書かれた施設に俺は入っていった。  ここは孤児院だ。俺が育った場所。廃園になった幼稚園をそのまま使用しているので、つくりは幼稚園ほぼそのものだ。 「あ~! 駿兄ちゃんだ!」 「おう! 元気か?」  俺は外で遊んでいた子にそう返事をしながらテラスにいる人に向かっていく。 「お久しぶりです、御船(ミフネ)さん」 「駿君、久しぶりね。元気だった?」  園長の御船さんに挨拶。そしてその周りにいる子供達に挨拶。  御船さんはここのみんなのお母さんのような存在で、俺もとても世話になった。あれ? そう言えば下の名前知らないや……  花壇に咲いている色とりどりの花、ひまわり畑には明るいひまわりが元気に咲いている。遊具で遊んでいる子供達、走り回ってる子供達。  もちろん中学生もいる。ベンチに座って話していたり、子供達と遊んでいたり……  懐かしいな。ついこの間までいたのに…… 「駿君、どう? 1人暮らしは?」 「色々苦労してますけど、まぁ何とかなってます」 「……高校は?」  御船さんは少し言いづらそうに訊いた。  まぁ中学までまともに人間関係築いてなかったからな。無理もない。 「まぁ……楽しいですよ」  俺がそう答えると御船さんは微笑みながら「そう」と頷いた。  少し躊躇ったのは、嘘を付いたからでは無い、寧ろ逆だ。こんな事を言うのが恥ずかしかったからだ。  
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