4.向日葵

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  「久しぶり、駿」  俺の前まで来ると女性はそう言った。佐藤美希(サトウ ミキ)、この園で唯一の、俺と同い年の女性。  どこか品のある身のこなしは相変わらずで、肩車をしてと駄々をこねたり体育館で熟睡するような事は無い。断じて無い。  いや、別にそれが嫌な訳でも無いんだけど。断じて無い。 「駿もやっぱり来てたのね」 「あぁ。美希もな」  美希は俺の最も親しい人で、最も信頼できる人で、最も俺の事をわかっている人。  逆に、たぶん美希にとっての俺もそんな存在だ。何せ物心付いた時から1人暮らしをするまでの15年、顔を合わせない日は無かった。それどころかほぼ常に一緒にいたからだ。 「久しぶりにあそこに行かない?」 「あぁ、わかった」  美希にそう答えると俺達は園の外へ向かって歩き出した。  相変わらず、不思議だった。  美希の声は他とは何か違う感じがして、聴いていると心が落ち着いてくる。  安心。美希の声から感じられる物。たぶんこれは美希が特別と言うよりも、それだけ俺が美希を信頼しているという事だろう。  俺達は特に会話をするわけでもなく、ただある所へ向かって歩いた。  別に話す事がない訳じゃない。むしろこれから散々話すだろう。  ただ、今はその時じゃない。  住宅街を歩いていき、近くの公園に着く。公園に入ると、その奥へ奥へと更に歩く。  やがて『それ』が聴こえてきて、懐かしい気持ちを更に大きくする。 「涼しいな……」  公園を突き抜けると河原がある。  そこは俺達のお気に入りの場所。  大きな川の流れから生まれた涼しい風が体中に巡る。 「どう? 高校は」  美希は川に手を入れながら、隣にいる俺に訊いた。  
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