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「お、おはようございます、恋華(レンカ)さん……」
先に言っておくが百合ではない。雰囲気はかな~り似ているが。
この人は杉山恋華(スギヤマ レンカ)さん、あの生徒会長だ。
いたんだよ、ここに。まぁ……いたんだよ。うん。
「さぁ! 早く着替えて来て! 1分経ったら覗きに行くよ!」
「すぐに着替えて来ますからそういうのホントやめてください!」
俺はすぐに2階へと上がり、自分のロッカーから着替えを出した。あの人は冗談抜きでやるからな。というか、初日にやられた。
バイトを始めてまだ5日目だけど、恋華さんのおかげで仕事も大体わかったし他の人とも仲良くなった。同じ学校の3年生の人というのが恋華さんで良かった。
ただ、色んな意味で疲れる……
着替えを済ませ、鏡を見て帽子の角度を直していると携帯が鳴った。百合から電話だ。
「もしもし?」
『あっ、駿! 今どこにいる!?』
その声のボリュームは耳が痛くなるほど大きい。
「どこって……バイトだけど」
俺は携帯を少し耳から離してそう答えた。
『あ、そうなの? 今駿の家にいるんだけど駿いないから。あ、クロお風呂に入れといたよ!』
あ~そうかそうか、クロを風呂に入れてくれたのか。
そして当たり前のように不法侵入ですか……
「なぁ、どうやって俺の家に入った?」
『え? もちろん玄関のドアを開けて』
「鍵は?」
『開いてたよ?』
やってしまった。まぁそれなら入ったのが百合で良かったよ。これが泥棒だったら大変だった。
「駿遅~い!」
下からそんな声と共に階段を駆け上がってくる音が……
「ヤバい! とりあえず切るから!」
『え? じゃあかえ……』
百合の言葉の途中で俺は電話を切った。何か言おうとしてたような気がするけど、今はそれどころじゃない。
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