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「駿遅いよッ!」
途中だった着替えを済ませた直後、恋華さんが2階へ来た。ギリギリセーフ。いやまぁ着替えは終わってたけど。
「電話してたの? あ、彼女?」
恋華さんが俺の左手にある携帯を見て言った。
「いえっ! 違います友達です!」
「いえ」が無駄に大きくなってしまった。これじゃあ嘘付いてるみたいじゃねぇか……
「まぁその話はまた後で! 早く降りてきてね~!」
恋華さんが階段を降りていく。後でするのかよ……っと、俺も早いとこ降りないとな。そう思い俺は恋華さんを追うように階段を降りていった。
「あの~……恋華さん? 何すれば良いですか?」
降りてびっくり。やる事がない。洗い物はもう終わってるし、客はいない。溜まりに溜まっていたはずの予約はもう全部作り終わってる。これじゃ俺が急遽入った理由がわからない。
「ん~……じゃあ細巻とか押し寿司の作り方教えるね! この時間どうせ暇だから!」
じゃあ何故急かしたんですか……
とは言え俺も色々覚えなきゃいけない事があるからな。暇なのは正直ありがたい。
「あ、そういえば店長さんは?」
「あぁ、結構さっき何かのアレでどっか行ったよ!」
アバウトな説明ありがとうございます。とりあえずどこかに行ったしかわからなかった。
「さて、鯖の押し寿司の時はね、水色のまな板を使うの。で、包丁はこれで……」
テキパキと全く無駄のない動きをする恋華さん。この人一体どれだけここでバイトしてるんだろ……
「はい、準備完了!」
「ありがとうございます」
「でね? お米の量が……………大体で良いから! この線が埋まるまでね!」
何か適当な気がするけど良いのか? と言うか、今の間は確実に思い出せてなかったよな? まぁ恋華さんが言うなら良いんだろう。
勝手に納得した俺はそれからも恋華さんの言う通りに練習していった。とても商品にならない出来の寿司は俺と恋華さんが2人で処分した。つまみ食いとも言う。
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