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「駿って今日朝からバイトだったの?」
「いや、夕方からだけど。何でだ?」
向かい合うようにテーブルの前に座ると、百合に訊かれた。
「じゃあそれまで何してたの?」
続けて百合が言う。
……ちょっと待てよ。何でこいつは俺がバイトの前から家にいなかったことを知ってるんだ? 出掛けるなんて一言も話してない。
「百合……今日何時に来たんだ?」
「ん~、10時ぐらいだったかな」
俺が出た直後じゃねぇか!
危ね……俺がちょっと出るの遅かったら鉢合わせになってたのか。
……あれ? そもそも俺は何で孤児だってことを百合に隠してるんだ?
別に中学の同級生は全員知ってるのに……
そういえば大輝にも瑠魅にも言ってないよな……
でも……何か言いたくない。それを聞いても百合達は俺と変わらず接してくれる。それはわかってる。
でも……
「駿! 冷めちゃうから早く食べよ!」
「あ、あぁ」
深くは考えないようにした。ただ単に『捨てられた』と言うことを他人に知られたくない。
ただそんな理由だと、俺は頭の中で決めつけた。
「じゃあ、いただきます」
「いただきま~す!」
俺が言ったのに続いて百合もそう言ったが、百合はまだ食べようとはせずに俺をじっと見ている。
そんな視線が何かプレッシャーのように感じた俺は恐る恐るハンバーグを口に運んだ。
うまい。俺もハンバーグくらいは作れるんだけど、何と言うかそれとは比べ物にならないぐらいうまい。
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