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「で?」
「え? 何?」
今度は俺が百合に訊く。現在の時刻……午後10時。よく考えたら勉強なんてしてる暇なかったな。
「そろそろ帰らないとヤバいんじゃねぇのか?」
「ん~……そう、かな?」
百合は壁に掛かっている時計を見るとそう言った。
「じゃあ帰ろっかな!」
百合は荷物を持ち、玄関に向かう。俺もそれについて行った。
「じゃあまた明日ね!」
「あぁ、またな」
百合は「おじゃましました~!」と元気に言い、家から出ていく。
俺はそれを見届けて再び居間に向かった。
……らいけないよな? 俺は百合に続いて外に出た。
「危ないから送るよ」
「あ、ほんと? ありがと!」
別にこの辺りにそういう不良と呼ばれる人はあまりいないが、それでもこんな遅くに女の子が1人で外を歩くのはまずいだろう。
当たり前だが外は真っ暗で、月が凄く明るく感じた。
「あ……」
「え? どうしたの駿?」
帰り道の途中、見慣れた所を横切った。
ひまわり園。消灯時間を過ぎ、もうすっかり静かになっている。
「ここって孤児院だっけ? 酷いよね。自分の子供を捨てるなんて……」
「……あぁ、そうだな」
全くだ。どんな理由があった所で許されることじゃない。
俺は今も親を恨んでるし、これからも許す事はないだろう。
アイツと違い、俺は強くも優しくもない。
「駿?」
「あ、悪い。何でもない」
俺は百合にそう言って再び歩き出した。
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