始まりの好き

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斜め上から落とされる声が ただ、ただ好きだと思った。 「先生。好きです。つきあってください。」 英語教師だと言うのに、私の担任―鬼島は白衣を着ていた。 3年の秋。 受験シーズンも本番になってきた頃だった。 肌寒くなった風が窓の外では吹いていて、痛いような音をたてて窓にぶつかる。 「先生?」 固まったままの先生を見つめる。 メガネの奥で光った目…… 「……エイプリルフールは今日じゃねぇぞ…笹神…」 いや。 女の子の告白を嘘扱いって酷いと思う。 「あの…真剣な愛の告白ですけど……」 「…笹神…お前、漫画とか携帯小説の読みすぎだぞ。そのノリだと、半分冗談混じりだった告白が真剣にとらえられて、お前とつきあってみる、みたいな展開に持ち込まれるだろ?でもな、実際教師と生徒の恋なんてあるわけねぇだろ?めんどくさい」 「…」 「俺とお前は年はそれほど離れてないが、教師と生徒だ。それ以上の関係も以下の関係もありえない、だろ?」 うん。 言うと思った… だから、私は次の言葉を考えてきたんだ。 これから星の数ほど好きと伝えて、星の数だけフラれて、拒絶されたとしても…… 「先生…勝負しようか…」 .
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