春風

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「これでやっと半人前の法士になれたわ。実家にも仕送りができる」 言い終わると右手でハットを持ち、アスピアの夜警に向かって大きく振ってみせた。黒髪が夜風になびいて小さく揺れている。 夜警も軍帽を振って応えてくる。 「少し眠るわ。明日は新しい精霊法の契約式があるから」 「ああ。おやすみサニア」 堤を下ったサニアが法士用の営舎に入ったのを見届けると、レニは再び対岸に向き直った。 「平和だなぁ」 そう呟くのと眼を閉じるのは、ほとんど同時だった。
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