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「ねえねえ」
「ねぇ、かっこいいよね」
きゃあきゃあと騒ぐ女子達とバックミラー越しに目があった。
「あっ。あの」
「はい?」
右に座る女の子が声をかけて来る。
「あなたが雑誌に書いてあった一慧さんですか」
丸く隈どった目を輝かせて身を乗り出す。
彼女の気持ちを代弁するようにクリンクリンの黒髪が肩先で跳ねていた。
「ええ、まあ」
「うはぁ~!写真より全然かっこいいですね」
「ちょっとミクちゃん。失礼だよ」
はしゃぐ友達を、隣に座る子がたしなめた。
髪は茶色に染めていたが大人しい印象で、どちらかと言うと、こちらの子の方が可愛い。
「ああ。旅行雑誌ですか」
宿の事よりイケメン揃いの何とかと書かれた雑誌を思い出し口にした。
「そうなんですよ~。イッコが騒いじゃってぇ。仕方ないから来てみたんですけど、甲斐ありましたわぁ」
「やだっ。違うよ、騒いだのはミクちゃんで」
懸命に口を挟む茶髪のイッコちゃんをよそに、ミクちゃんは喋りつづける。
「はは。 ありがとう御座います」
乾いた愛想笑いを浮かべて、小さく溜め息をつく。
早く、宿に付けばいいのに。
送迎役をこれ程嫌だと思うこともないくらい、苦痛だった。
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