非日常へ

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うずくまったままの男をジッと見つめる。 男は、コスプレイヤーかと疑うほど変わった服装をしていた。 黒い着物に、底が高い下駄に小さな帽子――まるで、昔話に出てくる天狗のような服装。 そして、苦痛に歪められていてもわかる程、整った容姿をしていた。 す、っと通った鼻筋。 薄めの唇。 黒々と艶のある黒髪は、日に当たっても茶に煤けない。 燃えるような赤の瞳は、ルビーみたいだ。 彼は自分の肩を押さえたまま動かない。 その指の隙間から流れるのは、 赤い滴。 「怪我、して…」 思わず声をあげると男は黙れと言わんばかりに睨みをきかせた。 強盗を助けるなんておかしな話だけど、私の部屋をスプラッタにされても困る。 一瞬怯んだけど、それでも彼に近づき、カラスのために持ってきた救急箱の蓋を開けた。 どうやら何か事情がありそうだし、怪我をほっといていきなり警察に突き出すのも酷な気がした。
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