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一歩二歩歩いてからカラスが気になって振り向く。
カラスはまだ飛ばずに翼を懸命に動かしていた。
…いや、違う。
飛ばないんじゃなくて、飛べないんだ。
カラスが翼を動かす度に赤い液体――血が飛び散るのを見て、またカラスの元へ戻る。
「君、怪我してるの?」
返事が帰ってくるわけではないけれど、とりあえず聞いてみる。
大した出血量ではないけど、この寒空の下放置しておけば体力を奪われ死んでしまうかもしれない。
それがなんだか可哀想で、せめて手当だけでもしてやろうとカラスを抱き上げると、
驚いたのか逃げだそうと暴れ出す。
「ちょ、暴れないで!手当するだけだから!」
暴れるカラスが手から落ちないようにしっかりと、尚かつ傷に障らないように柔らかく抱えた。
すると、私に敵意がないことを悟ってか、カラスの方も諦めたように暴れるのを止めておとなしくなる。
「よし、いい子。」
腕の中に収まったカラスに満足して、私は家へと急いだ。
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