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強盗に、私が誰なのかが関係あるのだろうか。
突拍子のない質問に、思わず首を傾げた。
「だから…お前は誰だって聞いてんだよ!!」
「ひっ!」
おまえこそ誰だよ!!
内心突っ込みつつも、ここは相手を刺激しないよう逆らわずに名乗る。
「お、小野塚友恵です…!!」
「オオノヅカトモネ?変な名前だな。」
いや、違うし…。
私がどもったせいで聞き間違えられたらしいけど、逆に名前覚えられなくてラッキーかもしれない。
何とか隙を見て逃げ出してやる。
そう私がひとり心の中で誓っていると、男が苛立ったようにまた口を開いた。
「ここは、どこだ…?」
また、不可解質問。
これではまるで記憶喪失。
多分、普通(泥棒の普通なんて知らないが)質問するなら、口座番号とかそういったものなはず。
この男は、泥棒ではないのだろうか。
「お前は――」
男の声が、途中で呻き声に変わる。
私はその一瞬の隙に男の腕から抜け出し、鞄を掴んで距離を置く。
見たか私の瞬発力。
ここで逃げるのが最良なのだろうけど、男の言っていた言葉と辛そうな呻き声が気になり振り返った。
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