淡い気持ち

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それからコーヒーを飲み終わるまでの20分程をずっと平井さんと話していた彼が携帯を取り出し時間を見た。 「あ‥僕もう行かないと。楽しかったです。毎週来るんで時々寄らせて下さいね。いくらですか?」 「よ、450円です‥。」 「ありがとう、莉子ちゃん‥だったよね?また来るよ。」 「あ‥はい‥。あ、ありがとうございました‥。」 頭の中が真っ白になっていた。莉子ちゃんって言った。今、莉子ちゃんって‥。 私と平井さんは二人して余ったお花を抱えて出て行くお花屋さんの後ろ姿を見送りながら深いため息をついた。 「‥‥いい男ねぇ‥。10年若かったら‥。」 平井さんはそう言いかけてハッとしたように首から上を左右に振った。 「ダメダメ!もう男は懲り懲りよ!危ない危ない‥‥」 平井さんは2年前に15年連れ添った旦那様と別れたばかりだった。理由は旦那様の浮気だった。
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