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頑丈なガラスケースの中の宝石は、まるで魔力を持っているかの様に吸い込まれそうな深い蒼だった。
小指の爪程しかない小ぶりな石とは到底思えない魅力が在る。
照明の褪せた黄色をその身でじんわり溶かし、その核まで引き込んで行く。
僕は海で溺れて深海へ引きずり込まれて行く様な錯覚にすら陥った。
「あと三分を切ったぞ、皆気を引き締めろ。」
警部の一言で僕は現実に帰ってこれた。
気が付くと館長もこの部屋に入って来ていた様だ。
しきりに警部に話しかけ、予告状だと思われる青い封筒をぶんぶん振り回しながら「奴ら」は何処から来るか、はたまたどんな手段を講じる等、箸にも棒にも掛からない譫言を駄弁っていた。
残り一分を切る頃には部屋の空気は張り詰めて居た。
それほど大きく無い部屋にこれでもかと詰め込まれた警備員仲間も皆押し黙って、館長でさえも固唾を飲んでその時を待つ。
…
……
そっと腕時計を覗き、頭の中でカウントダウン。
「10…9…8…」
「7…6…5…」
「4……3……」
「2………」
「1………」
時計が20:00になるや否や、地下から轟音が響き建物全体を揺らした。
その直後、博物館中の照明という照明が落ち、この部屋は闇に包まれた。
部屋がざわめく。
「完璧だ。」
僕はほくそ笑んだ。
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