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「…………ロリコンだったのか」
支えていた両膝が、糸の切れた操り人形のように力が抜け、だらしなく椅子に座ってしまう。
唯一の味方だと思っていた母にさえも見捨てられた。
「あれ……何も言ってこない……だと? ということは、本当にロリコンでいいんだな!?」
「早く警察でも呼べよ……」
もうどうでもよくなってきた。
20年近くもまともな人生を送れたんだ。悔いはもうないって言ったら嘘になるけど、覚悟みたいなもんなら用意できたよ。
さ、とっとと俺を監獄にでも――
「は? なに言ってんのお前?」
「…………え?」
「いや私は単に、からかうつもりでロリコンなのかと聞いただけだぞ?」
ん……? 話が見えてこないんだが……
「つまり、結論から言えば……俺は犯罪者じゃないんだな?」
「だから何言ってるんだお前は? 私は、自分の子を犯罪者に育て上げた覚えは一切ないぞ。
それよりお前、さっきから自分のことを犯罪者やら警察呼べやら、一体どういうつもりなんだ?」
自分の無実を証明できたのはいいが、今度は自分の誇大妄想の酷さに恥ずかしさが込み上げてきやがった。
うおぉぉぉおお、やべえ傍から見りゃあただの痛い人じゃねぇか俺……
「いや、気にしないでくれ。何でもないから……ホント、何でもないからさ……」
「おぉう……そうか、なら別にいいんだが。なんかやけに声沈んでない?」
自己嫌悪だよバーロー。
「いや大丈夫だ。それより話が逸れてきたから元に戻そう。どうして、雛ちゃんが俺の家にいることを知ってるんだ?」
「どうしても何も、その娘のことで電話したんだよ私は。まあかくかくしかじか――」
「まあそういうわけだから、その娘の面倒頼むぞ」
「ああ、わかってるよ」
「くれぐれも手を出さないようにな! 期待してるぞロリコン息子よ」
「おい待て、俺はロリコンじゃ――」
受話器を置く音が鳴り響き、耳に残ったのは終話音だけだった。
あの母親一方的に切りやがった。今度会ったら絶対ただじゃおかねぇ。
そして俺がロリコンではないことを証明して――できるだろうか……
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