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正午を回った頃、俺と雛ちゃんは商店街に到着した。
あれからずっと雛ちゃんを肩車したままだ。
進んでいく度に周りの人々の視線を集めるが、特に面白いものでもないのですぐに視線は散って行く。
こうして歩いていると、傍から見れば俺達は一体どんな風に見えるのだろうか。
年の離れた兄妹、もしくは従兄妹、はたまた親子に見えたりしてしまうのか?
そんな事を考えているとますます周りの視線が気にかかって来た。
ここは喫茶店へ急ごう。
流石に店内まで肩車は恥ずかしかったので、不平を洩らす雛ちゃんになんとか妥協して貰った。
ドアを開けると鈴が鳴り響き、心地好い暖気が迎え入れてくれた。中は木を基調としていて、モダンな雰囲気を醸し出している。
すぐに奥からウェイトレスが出てきた。
「いらっしゃいませー、何名様でしょうか?」
俺は右手の人差し指と中指でVサインを作りながら「二名です」と答える。
「かしこまりました、どうぞこちらへ」
ウェイトレスに付いていくと、日当たりのいい窓側の二人用の席に案内される。
席に座ると、雛ちゃんは食い入るようにメニューに目を通していた。
少ししてさっきのウェイトレスが、水の入ったグラスをトレイに乗せて戻って来た。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「じゃあ俺はホットのコーヒーで」
「はい、ホットコーヒーがおひとつですね」
「雛はねー……DXベリーベリーぱふぇ!」
ちょ……なにその無駄にお高そうなパフェ。
つかDXって何だよ。お兄さんちょっと怖くなってきた……
「DXベリーベリーパフェがおひとつですね」
俺の心の中の悲痛な叫びも知らず、ウェイトレスは伝票に書き込んでいく。
汚い、流石ウェイトレスきたない。
「ご注文は以上でよろしいでしょうかー?」
「あ、やっぱコーヒーなしで……」
「かしこまりました。では、少々お待ち下さい」
終始営業スマイルを崩さないウェイトレスに対し、俺はさぞかし青ざめた顔をしていたことだろう。
「雛ちゃん、ちょっとメニュー貸して貰えるかな……?」
「はーい」
ご機嫌な顔の雛ちゃんからメニューを受け取ると、その中のデザートの一覧表を探す。
DXベリーベリーパフェ……と、あった。
『DXベリーベリーパフェ 1480円』
「ハハッ……泣けるぜ」
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