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「ってことだよー……ほむほむ」
意外と早く来たなんちゃらパフェを食べながら、雛ちゃんは説明を終えた。なんかやけに鮮明な想像が出来たのはきっと気のせいなのだろう。
朝一緒に過ごしたり、さっきの話を聞く限りでは、雛ちゃんって他の同年代の子供とはかなりズレているんじゃないかな?
凄いマイペースだし、この年にしてもう肝が座ってるし。
まあ可愛いからいいんだけど。
しかし雛ちゃんのお母さん、怖そうだな……
約十五分後、あれだけの質量を誇っていたパフェは見る影もなくグラスから消え去っていた。
その質量すべてが目の前の小さな体に収まっているのは、摩訶不思議としか言いようがない。
よく女の子はスイーツは別腹というが、ほんとに中に異次元空間でもあるんじゃなかろうか。
そのいわくのお腹の持ち主は今、非常に満足そうな顔でお腹をポンポンと叩いていらっしゃる。
「おいしかった?」
「うん!」
俺が聞くと、今日一番の笑顔での返事。
これを見れたなら、高いお金を払った甲斐もあったかもしれない。
外に出ると、喫茶店の中で暖まった俺の体温を一気にかっさらってゆくかの如く、冷たい風が俺を刺激してきた。
やはりコーヒー一つくらいケチらずに飲んでおくべきだったか。
雛ちゃんはというと、子供は風の子とはよくいったもので、あれだけ冷たいものを食べたにも関わらず元気いっぱいだ。
このクソ寒い中だというのに、商店街は多くの人で賑わっている。
その後も商店街を雛ちゃん連れて遊びまわって(連れられて遊ばれまわって)いるうちにすっかり太陽ま傾いてしまった。
「雛ちゃん、そろそろ帰ろうか」
「えー、まだ遊びたいよー」
あそこまで俺を嬲っておいてまだ足りぬと申すかこの娘。
「そんなこと言っても、約束の時間に間に合わないと雛ちゃんのママ心配するよ?」
「あ...」
今まで忘れていたのか、思い出したように言葉を漏らした。
さっきまでずっと笑っていた顔に、段々と不安さが入り混じってくる。
そんなに俺と遊ぶのが楽しかったのかな? と自己解釈したかったがきっとそれだけじゃないんだろう。
「それじゃ、帰ろっか」
「うん...」
商店街を後にして、目的地へ足を向ける。
その際、雛ちゃんの手を繋ぎ歩幅を合わせるように気をつけたが会話が弾むことはなかった。
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