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半ば涙目になりかけていた俺だが、ここで更に追い込まれてしまう事態が。
どうやらぷにぷにしすぎたせいなのか、幼女の目が覚めてしまったらしい。
「ん……」
幼女は一瞬指をピクリと動かした後、身体を起こした。
俺のほうを見るが、まだ寝ぼけているのだろう、目が一文字になっていてとても可愛らしい。
幼女の意識は徐々に覚醒してゆき、それと同時に双眸が見えて来る。
やがて完全に覚醒しきったその目は、予想以上に大きくてくりくりしていた。
そして今、その双眸が俺を見ている。ヤバい。これは非常にヤヴァい。
ここで泣き叫ばれでもすれば、完全に死亡フラグが立ってしまう。何せ、俺が住んでいるこの部屋はマンションの一室なのだ。県外の大学に通う際、俺は親元を離れてこのマンションのこの部屋を借りる事にしたのだが、今はそんなことはどうでもいい。
もしこの幼女が泣き叫んでしまえば、付近の部屋の住人が異変に気付くだろう。
ろくに外にも出れないし、怪しんで通報されるかもしれない。
それだけは絶対に避けなければならない。
だが、俺の予想とは裏腹に、幼女が発した第一声はこんな言葉だった。
「おなかへった」
どっかの修道服着たロリシスターが言ってそうだ。
「ごはんー」
いやそう言われましても。
まあ俺だって朝飯くらいは作れるが、ってそういう場合じゃねぇ。
誰だよこの子。
「えーと、お名前は?」
ってなに幼女に敬語使ってんだよ俺。
「ごーはーんー」
うーむ。
「なるほど、ごはんちゃんね」
「雛」
「ん?」
「ひーなー」
多分それがこの幼女の名前だろう。
俺が意地を悪くしてごはんちゃんと言ったのが効いたのか、少し頬を膨らませていた。
「悪かった悪かった。雛ちゃんね」
今度は名前で呼ばれたのが嬉しかったのか、俺が謝ったのが良かったのか、顔をはにかませていた。
表情がころころと変わって、見ているこっちも飽きないので、なんだか自然と口の端が綻んでしまいそうになる。
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