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俺は人差し指と中指を使い、ごはん粒が潰れてしまわないよう器用に摘み取る。
そして口を大きめに開け、勢いよくごはん粒を放り込んだ。
噛み締めるようにしてごはん粒を咀嚼するが、ろくに触感も伝わって来ないので凄く虚しい。
「ごちそうさまでした……」
いただきますの合図からおおよそ10秒も経たない内に、俺の朝食の時間は終了してしまった。
このままでは味気無いどころか、虚しすぎて発狂してしまうかもしれないので、俺は自分へのせめてもの救いとして雛ちゃんの朝食風景を眺めることにした。
雛ちゃんは炒飯が気に入ったのか、笑顔を崩さないまま少し不器用にスプーンを扱いながらそれを食べている。
頬にごはん粒がついているが、本人は気付いていないのかそのまま食べ進めている。
やべぇ可愛い。可愛すぎる。
いや可愛いな、凄く可愛い。
本当に可愛い物を見たときに可愛い以外言えなくなるって、今初めて知ったよ。
それにどうせ食べるなら、あのほっぺについてるごはん一粒がよかった。
てかむしろ俺があのごはん粒になりたい。
まあそんな事は置いておいて。
「美味いか?」
「うん、すっごいおいしいよー!」
雛ちゃんが屈託のない笑顔を向けてくる。
なんかもう俺、こういうの見てるとロリコンでも……おっと、こんな時に電話か。
嘘ではなく本当に電話は鳴っている。
俺は耳障りな黒電話の音を欝陶しく思いながら、右ポケットに手を突っ込むとそこにあった携帯を取り出す。
画面を開き、そこにあった文字を読み取ると、それは母親の名前だった。
こんな早くにどうしたって言うんだろうか。いつもなら寝てる時間のくせに。
俺は雛ちゃんに人差し指を唇にたて、静かにするようにというジェスチャーを送ると、意を決して通話ボタンを押した。
「もしもし、俺だけど」
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