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「あ? まさか……いま巷で噂の、オレオレ詐欺ってやつか……?」
通話始めて早々なにぶっ飛んだこと言ってんのこの人。
「ちげぇよ。てかオレオレ詐欺ってのはまず自分から電話かけてやるもんだよバーロー」
「む、妙に詳しいな……まさか、常習犯か?」
「切るぞ」
「あああ! 悪かった悪かった。久しぶりなんだし、そう怒りなさんなって」
これが怒らずにいられる場合だろうか。
俺には明らかに喧嘩売られてるようにしか聞こえなかったよ。
お恥ずかしながらも、これが俺の母である。
一人暮らしを始めてから思ったことだが、よく十八年間も同じ屋根の下で暮らしてこれたな俺よ。
「チッ、で、何の用だよ?」
「おお、よくぞ聞いてくれた息子よ。単刀直入に聞くけど、今お前の部屋に雛ちゃんって言う、小さな女の子いないか?」
母の言葉に一瞬、体中の筋肉が硬直し、心臓が止まった感覚に襲われる。
無意識の内にその場で思い切り立ち上がってしまった。
なんで知ってんの...?
俺は朝起きてからまだ雛ちゃん以外の誰とも接触していないはずだ。
なのにどうして?
もしかしすると何かしら雛ちゃんに関する情報を持っているのか?
いや……でも仮にもし違ったら……
今テレビをつけてニュースで雛ちゃんの誘拐報道が流れていたりしたら?
それで何かしらの俺に関する目撃情報みたいなのがあったなら?
ありえない。ありえない事だが、もしだ。もしも俺が夢遊病だったと言うなら……?
確率なんてなきにも等しい。でも、仮にそうであるとすれば、すべてのつじつまがあってしまう。
額に冷や汗が伝う。テレビなんてつける気にもならない。
「どうかしたのか? 息が荒いぞ」
母が心配そうに話し掛けてくる。
「ああ、いや、なんでもないよ」
仮にもやはり母である。
この状況下において一番頼りになる存在であるし、俺の清廉潔白を信じるという意味でもここは正直に言ってしまうべきだろう。
「で、どうなんだ? いるのかいないのか?」
生唾を飲み込み、意気込む。
「…………いるよ」
「お前……」
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