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「おい、大丈夫か?」
「あ、はい。助けてくれてありがとうございます」
「礼はいいよ。別に助けたつもりは無い。ただ、俺のお気に入りの場所で騒がれると迷惑だから止めただけだ」
「それでも助かった事には変わりありませんから。ありがとうございます」
もう一度そう言って彼にお辞儀ををする。
「……鳳 峯斗(おおとり みねと)」
「え?」
「鳳 峯斗。俺の名前だ。ちなみに一年」
少し恥ずかしそうに彼━━鳳さんはそう言って直ぐにまた不機嫌そうな顔に戻る。
「で、お前は?」
「……?」
「名前だよ。お前の名前」
「あ、そうですよね。ぼくは比奈 まひるって言います。一年です」
言われてまだ自己紹介していない事を思い出して名を名乗る。
「まひるか。今度からは気を付けろよ。じゃあな」
鳳さんはそう言って背を向け、ここから立ち去ろうとする。
「あ、ちょっと待っ━━」
その時、鳳さんの背中が少し汚れている事に気付いたぼくはそれを教えようと一歩前に踏み出そうとし、
「うわっ!」
足をもつらせてバランスを崩し、
「ん?」
鳳さんはぼくの呼び掛けに気付いて丁度振り向いていたところで、その胸に目掛けて見事に転倒した。
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