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† † †
「え~と、あの……」
「…………」
どうしよう、かなり気まずい。
さっきの騒動から約5分。昼休みも終わり、既に五時間目が始まっている時間だ。
しかし、鳳さんとぼくはお互いの事情を説明する為にこうして屋上で向かい合っている。
「これはですね……」
鳳さんの手にはぼくが被っていたウィッグがしっかりと握られている。
さっき鳳さんが腕を振った時に手がウィッグに引っ掛かったらしく、その時に落ちてしまったらしい。
おかげで、ウィッグを被っていないぼくの姿を見られて男だとバレてしまった。
さあ、どうしよう。
ぼくが男だとバレてしまったのは、まあ、良くはないけど今はいい。
いずれはバレるとは判っていた事だから、それなりの覚悟は予めしてあったし。
でもそれ以上に、さっき鳳さんの胸の上に手を付いてしまった時のあの柔らかい感触と……それから考えられる事実が衝撃的で、上手く頭が働かない。
そう、鳳さんは女の子だったんだ。
「つまり、その……はい。ご想像の通り、です」
「…………」
鳳さんから返事はない。
「えと、その……鳳さんも……?」
「貴女と一緒にしないでくれる?」
「……すみません」
ゴミ捨て場に捨てられている生ゴミを見るみたいな冷たい目付きで凄まれては謝るしかない。
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