一時間目・奇妙な2人

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「母さん、またそれ?」 ぼくの母さんは娘が欲しかったらしく、ぼくの見た目が女の子っぽいのをいいことにこうして隙あらば女の子向けの服を着させようとしてくる。 ナース服やメイド服、チャイナドレスなんて物も着させられそうになった事もある位だ。 この「まひる」って名前も女の子が産まれた時に付けようと思ってた名前をそのままぼくに付けたらしいし……。 「冗談はいいから、早くぼくの制服見せてよ。どこにあるの?」 「だから、ここにあるじゃない」 母さんは満面の笑みを浮かべたままぼくに制服を見せ付けてくる。 「母さん、冗談はいいから早く━━」 「何を言ってるの? これは正真正銘、まひるの制服よ」 「え?」 「だって私、まひるの履歴書を書いた時に性別を“女”にしておいたもの」 「……え~と、本当?」 「ええっ」 ぼくが今まで見たこともないような笑顔で母さんは本当に嬉しそうにそう言った。 確かに、ぼくの母さんならそれ位はやりかねない。 ……そういえば、合格通知と一緒にあった書類の中に「女子制服の採寸」について書かれた紙が入ってたっけ。 あれってつまり……そういう事だったの?
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