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「あんまり褒めるな。惚れる」
また劉華が妙な事を口走り始めた。
「いや、違う。すでにまひるには惚れているのだから、この場合は惚れ直すと言うべきか」
急に立ち止まり真剣な顔で下らない事を本気で考え始めた。
幸い、罰掃除をしていてみんなが下校する時間から少しずれていたから周りに人は居ない。
とりあえず、劉華を見守る事にした。
「……くっ、駄目だ。この世界に存在する言葉では、俺のまひるに対するこの想いを的確に表現出来ない……!」
ぶつぶつと何かを呟いていたかと思うと、いきなり自分で自分の頭を掴んで悶え始めた。
うん、端から見てる分にはこの劉華は面白い。
「ならば、せめてッ!」
と、思っていたらいきなりこちらに向き直ってぼくの肩に手を置いてグッと引き寄せてきた。
「な、なにっ?」
劉華が何かを決意した時のように、凄く真剣な眼差しでぼくの眼を見つめる。
突然の事態に心が追い付かず、訳も判らずぼくの心臓が鼓動を速めた。
心臓の鼓動はハッキリと聞こえるのに、それ以外の雑音は一切聞こえない。
まるで、今世界にはぼくと劉華しか居ないような錯覚すら覚える。
「劉、華……?」
ま、待って、落ち着けぼくの心臓。判ってる、劉華がこんな状態になるのは大分久し振りだけど、こんな状態になった劉華がこの展開で何を言うかは判ってる!
だけど、やっぱり……どうにもこの雰囲気は、苦手だ。
「まひる」
劉華が短くぼくの名前を呟く。
「好きだ。愛している」
そして短く、だがはっきりとした強い意思を込めた声で言った。
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