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『なんでこんなに、暑いんだ…。暑い…暑い!!』
「うるせぇ!暑い暑い言うな!」
優は、暑さのせいで苛立っていた。
『…寒い。』
「それも、言うな!」
睨まれたので、睨み返して黙って窓を見た。空はただ蒼くて蝉の声が響き渡っていた。それがさらに暑さを感じさせていた。
「暑いし…。お腹すいた…。」
和之が、お腹に手を当てながら机に伏せてそういった。
「和之は、そればっかりだな。」
『そーいう優は、今日勉強ばっかしてるじゃん。ただでさえ暑いのに…。』
その発言に、和之も起き上がり首を縦に動かした。そんな俺たちをちらっと教科書から目をのぞかせる優。
「テストだからだ。」
『テ…テスト!?』
「何の…何のテストだよ?」
焦る、俺たちを顔を教科書で隠しながらこちらに体を向けた。優の持っている教科書には“数学”の2文字。
『無理だ、数学何時間目だよ?』
「確か、1時間目だよ。」
『なおさら、無理だー…。』
「昨日、担任が言ってただろ?聞いてなかったのか?」
呆れたと言うように首をやれやれとふった。
「あっ、瑠璃が来たぞ!」
不意に、和之が小声で言った。優も和之も廊下を歩く女の子に合わせて頭が動いていた。そして机に座るのを見ると、またさっきみたいに優は教科書。和之は俺たちに体を向けた。
「やっぱり、美人だよな。なぁ?」
「あぁ。」
和之の小声の質問に優はそう答えた。
「琢磨もそう思うだろ?」
『ん?…あぁ。』
そう言って、俺はまたすぐ窓から見える空を見た。後ろでは、和之が優とあれこれ話している声が聞こえていた。
宮田瑠璃。髪はセミロングで茶色。目は、大きくて…背は小さい。学校で一番美人と有名だ。
和之も優も同じクラスになってから、まぁ特に和之は宮田瑠璃をいつも目で追っていた。いわゆる一目惚れ。
俺は、全然興味が無かった。いや、興味が無かったんじゃなくて、高嶺の花だと思っていて目で追わないようにしていただけかもしれない。
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