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『またね…またいつか。』
君はそういった。またいつかって。そのいつかはいつくる?
「琢磨?おーい?聞いてるのか?」
『えっ?…あぁ。ごめん。』
慌て返事をした。
テラスから見る空は昨日の雨が嘘の様に晴れ渡っていた。テーブルの上には、まだ少し温かみのある珈琲が置いてある。カップから見える湯気は少し弱々しい。
「琢磨って、たまーにボーッとするよな?」
少し、笑いながら珈琲を飲んだ。
「忘れられない恋。」
『へ?』
「なんつってー。」
悪戯に笑ってこちらを見た。
それには、苦笑いを浮かべた。
『お前は…いっつも楽しそうだよな。』
「当たり前。人生楽しまなきゃ損だぞ?山寺静馬としての人生は1度しかないんだから!」
『人生一度きり。私としての人生はこれだけなの。だから、精一杯生きたい!』
「だから…。」
『琢磨も琢磨の人生を楽しまなくちゃね?』
「…楽しめよ!な?」
『……。わかってるよ。ヨシッ!そろそろ行こうぜ?』
「あぁ~。あのオフィスに戻らないといけないのかぁ…。徹夜になんないといんだけどな。」
静馬の愚痴を背中に聞きながら上着を羽織ながら店を後にした。
俺にとって、君の居ない人生はとても辛い。
君が好きだった桜が咲く春も。君の好きな花火大会がある夏も。食べ過ぎたといつも言っていた秋も。ギュッギュっという雪の音が好きといっていた冬も。君が居ないと…寂しいだけの一年。でも、そんなの仕事ばかりやっていると考えないですんだ。だけど、『琢磨の隣が一番落ち着く。』と言ってくれた君の笑顔と温もりだけは忘れられない。
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