第1夜

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新聞を読むことは僕の日課である。 別に今の日本経済がどうとか、政治がどうとか、文化人として知っておかないといけないから読んでいるわけではない。 『事実は小説より奇となり』という言葉がある通り、世の中には様々な興味深い事件が毎日どこかで起きている。 僕ら小説家はそれを求めて、新聞を読む。 実際に起きた事件をモデルにして小説を書いている作家も少なくない。 新聞とは、僕らにとってネタという宝石が埋まってるかもしれない秘密の宝箱なのだ。 という事で今日も僕は宝探しに励む。 一面の政治家の偽装献金事件、大手航空会社の破綻……そんな面白くない記事は飛ばし読みしてページを捲っていく。 芸能……スポーツ……社説……様々な記事があったけど、なかなか僕の心を動かすような記事というものはない。 そもそも、そんな簡単に見つかるもんなら、今頃僕は何冊もベストセラーを出しているだろう。 それに、あんまり有名な事件を扱ってしまうと他の作家とネタが被ったり、読者がネタを知っていたりする。 目立たないけど、何故か惹かれてしまうそんな都合の良い事件はなかなか見つからないものである。
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