第2夜

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小料理屋を出た後、吉田さんはタクシーに乗って何処かへ行ってしまった。 僕はなんとなく歩きたい気分だったので、タクシーには乗らずそのまま夜の飲み屋街を一人でぶらぶら歩く事にした。 テンション最高潮の酔っ払いの集団や風俗店の勧誘の声が響き、都会の夜はまだまだ騒がしい。 妖しく光る都会のネオンをぼんやりと見上げながら、なんであんな事を約束してしまったんだろう……と後悔していた。 「直木賞か……」 僕はその単語を何度も呟き、その度にため息をつく。 直木賞なんてものが本当に僕に取れるのか? いや、そもそも直木賞とは狙って取れるもんでもない。 実力ある有名作家が何度も涙を呑んでるのだ。 一度も候補にも選ばれた事がない僕が直木賞を取るなんて宣言したら、他の作家に笑われたりしないだろうか?
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