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完全に心が落ち着くまで、そうしていたかった。
けれど、今度は違う意味で落ち着かなくなってきた。
これ以上彼女を抱きしめていると、彼女をこのまま押し倒してしまいそうな感じになってきたので、僕は唐突に彼女から離れた。
なんとなく顔を逸らしながら「いきなり抱きしめたりして、悪かった」と僕は謝る。
「あたし、龍ちゃんの彼女なんだから、別に謝らなくてもいいのに……」
「そうだよな。ごめんよ」
「また謝ってるし……」
絵理は口を尖らせながらそう言った後、噴き出すように笑った。
僕も釣られて少し笑顔になる。
「あたしじゃなくて、あのオバサンの方に謝ったら?」
「藤井さんに?」
「八つ当たりしちゃったんでしょ」
「そりゃあまぁ、そうだけど……」
「だったら、ちゃんと謝らないとね」
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