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「ヴェル、ヴェール」
「ぁあ?」
やり場の無い怒りを持て余していると、ソーレに腕をつつかれる。
見ればソーレは黙ってある方を指差している。
「…………あー悪い」
振り向いて、俺はやつの言わんとしていることに気付いて、大きく息を吐いて力を抜く。
あの女相手に手こそ出さなかったが、感情はだだ漏れだったらしく、背後にいた手下たちが震え上がっていた。
すぐ隣のアーズリーも固まっている。
「でも思い出したわ」
「ん?」
「今の女。あの色気でここの男どもをとりこにしてると噂のやつだ」
怒りというか殺気染みた感情を振り払った俺は何とはなしに謝ってみる。
そのまま座りなおせば、ふいにソーレが話し始めた。
ソーレの言うには、そうやって落とした男を騙し、使いながら仕事をしているらしい。
「ま、いいように使われるような羽目にならなくてよかったじゃねーか」
「そういう問題か?ま、もういいよ。関わるつもりもないし」
ソーレの妙な慰めに俺は溜め息をつきながら答える。
ホントこれで終わりだと思っていたんだ。
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