Prologue.Ⅰ

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「して、話を聞く気になったかの」 「ああ」 握りしめた手を開き、両手を上げる俺に剣をしまいながら尋ねるジイさんに、よく言うという言葉を飲み込んで頷く。 それにジイさんが近くの石に座るのに俺もその場に腰をおろした。 「わしは今この世界に怪盗を生みだそうと思っとるのじゃ」 「怪盗……?」 一拍おいて喋り出した内容に俺は、ガキの頃世間を賑わした噂を思い出す。 「決して正体を見せず、悪人から金を奪い、罪を暴く。どうじゃこれ以上面白いことはなかろう?」 けれど深く考える間もなくジイさんは話を進める。 確かに変わり映えのしない毎日を過ごすよりは楽しそうだ。
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