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財布とコインを奪ってそれで終わりにするはずだった。
でも偶然にも昨日の今日であいつと出くわすなんて。
しかもご立腹中。
逃げようとした私の手を掴んで離してくれない。
「それにコインは私あれでコンプリートできたから返せないわ。あ、空でよければ財布はお返しするわよ」
困ったなと思いつつも、そんなこと欠片も出さずにからかってみる。
ここで手をあげたら最低なやつに位置づけるんだけど、堪えているところを見ると甘い男みたい。
「あぁ、でもよく見たらあんたなかなかいい男じゃない。ね、私と手を組まない?」
だから、いつものパターンでこっちも甘く出たら、思わぬ反応が返ってきた。
あれ?以外。簡単に落ちると思ったのに。
でも、だらしなく私に見とれる顔よりきっと睨みつけている顔は新鮮で、面白いわ。
「あら、残念。じゃお言葉通り消えてあげる」
だけど今はこれ以上ここにいると面倒そうなので、退場することにする。
ちょっともったいなかったけど、引き際も大事だもの。
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