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その眼鏡があんまり生意気なんで、私は初心を忘れて口論を繰り広げてしまう。
「あーしゃぁないな。わかったよ」
「ホント!」
「ヴェルテ!」
その途中で私と眼鏡の口を手で塞いで、黙らせた彼が告げた一言に喜んでいると、眼鏡は不服げな声を彼に向けている。
ふぅん、彼ヴェルテって名前なんだ。
眼鏡の言葉から思わぬ情報を入手した私は、その眼鏡を宥めているヴェルテの背中を眺める。
やがてまだ完璧とは言わないが、眼鏡が承諾するようなことを言ったのを確かめて、私は二人の腕をとる。
眼鏡はその手をぱっと振り払ったけど、とりあえず名乗ってくれた。
「お前もそろそろ名乗ってくれないか」
で、振り払わなかったヴェルテにそう促されて、まだ名乗ってなかったことを思い出した。
「あ、そうだったわね。私の名前はロッサ。仲間にしてくれたこと感謝しますわ」
だから私は自分から離れて、二人に向かってたおやかに一礼する。
ただの暇つぶしのはずが、私の人生を大きく揺さぶる出逢いになるなんて思わなかったわ。
そして私は噂に落胆した評価を心の中で書き換えることにした。
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