Removal.Ⅰ

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連れてこられた先はおそらくあちこちにあるスラム街のうちの一つだろう。 ただいつも見るところとは、質が異なっている。 俺らの歩く道の両脇にはぽつぽつと建物が並んでいるが、人の気配がまったく感じられないのだ。 ロッサもアーズリーも不穏な空気を感じ取ったのか俺の傍から離れようとしない。 そんな気配から俺は一つの予想がよぎる。 この街、いや国は実を言えば結構栄えているし、治安も悪くはない。 が、それは限られた範囲でのみで、そこを一歩出れば無法地帯が広がっている。 んでその限られた場所に住めるのは、それなりの権力と財力を持つ限られた人間のみ。 そういったのがなければないほど、危険と隣り合わせの区画へ追いやられていく。 いわゆる貧富の差ってやつだ。 でその差の最下層の人間が集まって、スラム街を作っていったりする。 でもってそのスラム街にもさらにいろいろ差があって、普段俺らがいるところは一般街と隣り合っているせいかまだいいほうだ。 で、その最下層の一番下に当たるところとは二通りある。 ひとつは悪党どもの巣窟となり手が付けられない場所。
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