Removal.Ⅰ

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指の先には洋館が一軒。 見た感じは普通、というよりけっこうしっかりしている。 目の前の建物といい、町並みといい、こうなる前はここも賑やかな場所だったんだろうな。 近づいてみれば、幾分ぼろくは見えるが、安定感のある造りの家だ。 それで改めて通り過ぎた街並みを見ると、ビルに紛れてごく普通の家屋が並んでいる。 そこからもとはスラム街というより、普通の人が住む街であったことがうかがえた。 「一時オレが仕事で使っていたからそう傷んじゃいないぜ。水光熱も心配なし」 ドアを開けながらグリージョがそう説明している。 しかし最近は使っていなかったのか、開けた瞬間に埃が舞うのが見えた。 「手入れはしてねーのかよ」 「あれ、軽くはしたんだがな。悪い」 埃を吸い込むまいと口に手を当てて目を細めれば、グリージョも意外そうに頭を掻いている。
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