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――アーズリー
『そんなスピードで勝てると思ってるのか?』
「あぁ、そのつもりだぜ」
後ろにいたはずのやつの車は、いつの間にか隣に並んでいた。
相変わらずヴェルテはセアと言い争っている。
とにかくそんなやりとりはこいつに任せて、おれは運転に集中する。
既にスピードはメーターを振り切っているので、いつも以上にコントロールが効かない。
「くっ……」
さらにセアはおれらを追い越そうとせず、時折車体をぶつけてくるのでますますハンドルをとられそうになる。
「押し返せないか、アズ」
「だから、ムチャを、言うなっ!」
そんなことを繰り返されるうちに車は随分道の端へ追いやられてしまった。
横でヴェルテがまた無理を言うので、おれは怒鳴り返す。
それができるならもうしてる。
だがプロ相手に、普通の乗り方しかしない素人がやり返すのは至難の業である。
でもぐずぐずしていれば負けるのはおれらだ。
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