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「運転代わってくれないか?」
「は?どうした、どっか痛めたのか?」
シートに深く凭れたおれはヴェルテに力なく言う。
「安心したら腰が抜けた」
「おま、ここにきて……しゃーない。ほら」
途端に心配そうに聞いてくるやつにおれは現状を素直に告白する。
腰が抜けたどころか足が笑っている。
すればヴェルテは呆れ顔をしたが、おれを運転席から引きずり出して自分と位置を入れ替えた。
「大丈夫?」
「んなわけないだろうが」
ヴェルテの運転で再び走り出した車の中、助手席でぐったりしているとロッサがのぞき込んできた。
それを睨み返せばロッサはすすっと下がったが、いきなり目を手で覆われる。
「なにするんだ」
「頑張ったアズにちょっとした休息をね。このままバーに着くまで寝かせていいでしょ?」
「あぁ、降りるまでには立てるようになってて欲しいしな」
驚いていると二人にそう言われ、ならばと大人しくして目を瞑る。
そしておれは、ヴェルテに起こされるまでわからなくなるほどの眠りについていた。
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