Mission trickster-2

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その数日後、例の病院で起きた内部告発で、手術ミス隠蔽が発覚したという記事が新聞の一面を飾っていた。 「おや、内部告発ですか」 「得体の知れない情報で公にするより確実だと思ったもので。もちろんグリージョには了承を得ましたから」 バーで読んでいると、また横からマスターがのぞき込んできた。 新聞から目を離したおれはそう答える。 あの日持ち帰った情報をおれは、ただグリージョに渡すのではなく、あの若い医師にも手渡したのだ。 もちろん匿名でだが、ちゃんと使ってくれて良かったと思う。 「それはそうと、今回はありがとうございました、マスター」 それからおれは手を貸してくれたマスターに頭を下げる。 マスターがいなければあそこへたどり着けなかったのだから。 「なに、怪盗を目指す者を手助けするのが私の仕事、ですよ」 それにマスターが笑って返すのに、顔を上げたおれも笑い返した。
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