268人が本棚に入れています
本棚に追加
「助けを求めたつもりはない」
アーズリーを正面に見据え、いざ話しかけようとしたところで、いきなりばっさりと切られる。
……前途多難だなぁ、おい。
銀のフレームの眼鏡越しに見上げる視線に、俺は用意してた気軽な挨拶を飲み込む。
「さっきも言ったろ?俺の思ったままにしてるだけだって」
「暴れることしか知らない馬鹿のくせに、恩着せがましい」
つとめてラフに振る舞う俺と対照的に、こいつはどこまでも冷ややかだ。
おまけにとげとげしい。
その言動にカチンとするが、それで怒ってはあの男の二の舞になってしまう。
「それはお前の言い分。とりあえず痛い目見ずにすんだじゃねぇか」
一度気を取り直して俺は笑う。
あのとき言い争ってた時は平然としていたが、胸ぐらを掴まれた時になってこいつは一瞬怯えた表情を出した。
今までそうされたことがないのだろう。
だからこそ出た表情を俺は見逃さなかった。
それをやんわり指摘すれば、アーズリーは押し黙る。
よし形勢逆転。
最初のコメントを投稿しよう!