Prologue.Ⅰ

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でも文無しになってしまったのは手痛い。 「どうしたもんかなー」 そんな自分の性分に呆れて、俺は一人愚痴って空を仰ぐ。 言ったところでどうにもならないので帰ろうと決め、壁に預けていた背を起こした。 毎日同じことの繰り返し。 盗って盗られて、誰かが得をして損をする。 それがこんな生き方しかできない俺らの定めだとしたら、なんてつまらないことか。 人目を避けるように根城にしている空き地をめざし歩きながら、この街に暮らす誰もが考えていることを思い浮かべる。 「あーなんか面白いことでも起きねぇかな」 ばかげていても望むのはタダだと、足元の草を踏み分けながら俺は零した。 誰に向けた訳でもない、ありきたりな言葉を。
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