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「そうか。なら仕方がない」
諦めたような口調で男は表情を変えた。
いや、正確には笑顔のままだ。
ただそれはさっきまでの人の良さそうな笑顔ではなく、何かを企んでいるような笑み。
嗤う、といった方が正しいか。
とにかく口調とは裏腹のそれに俺もアーズリーも気圧される。
「あんた達が買ってくれないと言うなら、あんた達の情報を欲しがっている奴らに情報を売るだけだ。ヴェルテにアーズリー」
「「!!」」
男はそう言って懐から紙を取り出す。
ちらりと見えただけでも、そこには俺達の情報が細かく書かれていた。
「卑怯じゃねーか、あんたからすれば俺らは丸裸状態かよ」
「卑怯?違うな、これがオレ達情報屋の交渉テクさ」
悔しさ混じりで呟けば、男は目を細めて笑って返してくる。
そのダークグレーの瞳は計り知れない程の闇が見え隠れしている。
逆らえば確実に俺達は消される。
目を付けられたが最後、俺達には選択権などないわけか。
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