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その男は酷く焦っていた。
なぜなら自分が長い年月を掛けて作り上げた密輸ルートがたったの数日で暴かれ、潰されてしまったのだから。
それも正体不明の存在によって。
そいつがおおっぴらにしてくれたおかげで、ついに警察まで動き出した。
そうなったら捜査の手がここまで来るのはもう時間の問題。
今は早くここにある証拠を消さねばならない。
「そっちの言い値で取り引きするから、地下のあれを何とかしてくれ!」
得意の取り引き相手をそうせっつく。
「わかったよ。しかしせっかくの取り引き先がなくなるのは痛いなぁ」
「それは安心しろ。ほとぼりが冷めたら再会するわ」
残念そうに言いながら相手が置いたジュラルミンケースを引き寄せ、男は鼻で笑う。
とそのときだった。
部屋のドアが勢いよい開いたのは。
見張りが異常を見つけたのかと思えば、そこには見知らぬ男が立っていた。
「だ、誰だ貴様は!」
「ん、俺?俺は――――」
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